教わったことや本に書いてあることの受け売りではなく自らの体験の中で実感・納得できた原理・原則だけをまとめてみました
内容に関しては 財団法人少林寺拳法連盟 の正式な見解ではありません。 【サイト・オーナーへメールサイト・オーナーへメールする    
■ 第1部 第8話
明竜が昔所属していた支部で会報に連載していたエッセイを加筆再掲しました
■ 先先の先とは?

皆さん「先の先」、「対の先」、「後の先」は知ってますよね。
では、「先先の先」って知ってますか。

少林寺拳法を多少かじって度胸があれば、街の喧嘩で相手を殴り倒すぐらいはワケがありません。
だけど、その場に警察が来て、交番まで引っ張られてしまったらどうしますか。
たとえ売られた喧嘩でも、すぐ過剰防衛だの何だのと言って面倒なことになります。
ましてや、武道経験者などということがばれた日には、大変な騒ぎになります。

そうでなくても、相手が根に持って深夜自宅に放火でもされたらどうしますか。
もしくは相手にバックがついていて、三日後に、サングラスを掛けた関西弁を使う兄貴分と、包帯でグルグル巻きになった相手が慰謝料の請求に来たら、どうしますか。
たとえ売られた喧嘩でも、今の日本で人を殴って後腐れが無い方が珍しいと言えるでしょう。
反対に喧嘩になったけど自分からは手を出さず、顔にビール瓶を刺されたある空手チャンピオンもいます。

喧嘩は乱取りと違って、「はじめ」の号令もなければルールもなく、しかも喧嘩そのものが犯罪行為です。
ですから、そういう社会のルールの中で自分の身を守ることが、本来の護身術と言えるのではないでしょうか。

どこまでは我慢し、どこから手を出すか。これはパンチを避けるより難しいことでしょう。
でもそういう境界線を、あらかじめ自分の中で決めておかないと、
実際にそのような場面に出くわしたとき過剰防衛となってしまったり、相手に殴られて損をしてしまいます。

もうひとつ言えば、殴り合いになる前に危険な状況になるのを避け、しかも相手の暴力を制止できればそれに越したことはありませんね。
そんな都合の良い技術があるのでしょうか。

実はあるのです。これが「先先の先」と呼ばれる技術です。
そして開祖がもっとも得意としていたのは、この「先先の先」という技術でした。

それでは、その開祖のエピソードを含め事例を紹介しましょう。うろ覚えですが大体次のような話だったと記憶しています。
ある時、開祖の弟子が友人と居酒屋で飲んでいてやくざに絡まれたそうです。
多勢に無勢で旗色も悪くその弟子はその場で開祖に応援の電話をしたそうです。
「相手は何人いるんだ。」と開祖。
「5人です。」
「じゃあ今から30人ほど応援に行かせよう。」
「えっ、いくら何でも30人は必要ないでしょう。」
その電話でのやりとりをきいた5人のやくざは、「風と共に去りぬ」だったそうです。

また、ある拳士はたまたまレストランでの喧嘩に居合わせたそうです。
その拳士は喧嘩を止めるより先に公衆電話から警察に通報を入れたそうです。
おかげでその喧嘩はけが人も出ずに警察の介入で終わったそうです。
後で友人がその拳士に聞きました。「お前だったら、あんなのやっつけられるだろ。」
「そりゃあ勝てるかも知れないけど、ここはレストランだから、もしナイフやフォークで刺されたら大変だろ。」
その拳士は涼しい顔で言ったそうです。

実際に手を出さなくても、ちょっと頭を使えば暴力から身を守れます。
この頭で勝つ喧嘩が「先先の先」と言われる技術です。