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■ 第5部 GUN日記
涙と笑いの体験記
■ 10月27日 入院準備

最初に事情を伝えたのは会社の上司。
がん疑惑を言い渡された翌朝となる10月13日の朝一番に、「じつは腫瘍があり年内に手術をするかもしれない」と告げた。
もちろん仕事が治療の足かせとなることを防ぐための予防線だった。

部下からの深刻な打ち明けに上司も深刻な顔をしている。
「大丈夫でしょう。私はがん保険に2口入っていますから、2回までは大丈夫です」下手な冗談が口からでた。
なにもこんなところでサービス精神を発揮しなくてもよいのだが、しょうがない、これが僕の性格らしい。

上司に状況報告をした翌14日木曜日に、紹介状を持って大学病院に行った。
東京医科歯科大学病院・・・地下鉄御茶ノ水駅の出口を出ると目の前にそびえ立っている由緒正しき病院だ。これから病気と戦うパートナーとしては申し分ない。
(よろしく頼むぜ、相棒)巨大なビルに向かって心の中で挨拶した。

診察室で簡単な触診をされ、入院の意思を最終確認された。はいと返答すると、詳細は別の部門になるので、明日再度来てくれと言われた。明日も半休を申請して来なくてはいけないが、ここで面倒臭がるわけにはいかない。翌朝朝一で上司に半休願いを出し、午後は再び病院へと向かった。

11月2日からの入院が一番早いと言われたが、月初は比較的僕の業務が立て込むので避けたいところ。ただ、担当医のローテーションのためか手術をする曜日が決まっていて、そのタイミングを逃すと、1、2週間先延ばしになる。
医者が僕とは目を合わせずに「あまり、先送りにしないほうがいいですね」などという。おいおい脅かしてくれるなよ。

まだ病気の詳細は分からない。腫瘍が悪性なのか良性なのか、それがもっとも気になるところなので、色々な角度から質問してみた。
だけど、はっきりした返事がもらえない。患者には口が堅いのか、本当に分からないのか見極めるのが難しい。とにかく返ってくる答えは、最終的には実際の細胞を顕微鏡で見ないと結論は出ないというもの。
それだけ黒に近いグレーということだろうか・・・どうしても今の僕は悪い方に考えがちだ。

会社の帰りに、電車の吊り広告で、がんを特集する週刊誌を見つけた。いつもだったら目にとまることはなかっただろうが、今の僕は自分の現状、将来の可能性と危険性を知りたい気持ちで一杯だった。早速駅のキオスクで買い求めてみた。

がんの特集に結構なページ数を割いている。読めば読むほど深刻な気分になっていったが、ひとつだけ読んでいて力をもらえた部分があった。がん宣告を受けたときの本人達の感想というコーナー。おおかた暗いコメントばかりなのだが、1人だけやけに明るいものがあった。
「仕事も家事も忙しかったので、さぼる口実ができた。ラッキー♪」ものは考えようだ。

その週末、ユニクロで入院用のスリッパとスエットを買い揃えた。
さあ、入院準備は万端だ。