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■ 第5部 GUN日記
涙と笑いの体験記
■ 10月28日 殿様嫌い

長年経過観察してきた腫瘍を切ろうと思うに至るひとつのきっかけは、勤続20年のリフレッシュ休暇だ。特別付与と有給休暇と併せて1週間の休みを会社からもらうことが出来る制度。

妻と2人で海外旅行にでも行こうか、あるいはバイクをレンタルして1人で全国ツーリングにでも出かけようか、などと能天気なことを考えてみたが、いまひとつ「これでなくては」という案が浮かばない。そこで結局、予想以上に大きくなってしまった腫瘍の切除手術にあてることにした。
もっとも、その頃はまさかこんな大事になるとは思っていなかった。。。

親交のある産業医の先生にメールを送って、オススメの病院を紹介してもらった。
会社近くの病院を2件教えてもらったが、同時に「外科系クリニックならどこも同じようなもの、通いやすいところがいいのではないでしょうか」というアドバイスもいただいた。
10月1日、会社から休みをもらい、家の近所のクリニックに行ってみた。

西巣鴨の小さな駅ビルの中にそのクリニックは入っていた。隣のイタリアン・レストランにはよく行くのだが、注意して見たことがなかったせいか、いままでそこにクリニックがあることすら気付かなかった。
入り口のガラス戸に午前中の診療は2時まで書いてあった。今は1時40分、受付をのぞいて念のため「まだ、大丈夫ですか」と聞くと、受付の看護婦さんは「はい、どうぞ」と言った。
狭い待合室で待つこと20分、診察室に通された。

診察室に入るといきなりお医者さんから言われた。「別に悪いと言っているわけではないんですよ。ですが2時というのは、2時までに診察を終えるという意味ですから、もう少し早くきてもらったほうがいいですね」、僕の来院はあまり嬉しくないらしい。

過去に何度か病院で見てもらったことも含め、状況を手短に話し、その後2,3分の触診。
「だいぶ大きいですねえ。私でもできる簡単な手術ですが、ここまで大きいと下の筋肉とくっついているかもしれません。我慢せずにもっと早く来ればよかったですね」と言われた。
(おいおい、こっちは何年間も細心の注意を払ってきたぞ・・・)瞬間的にカウンターパンチを放ちたくなったが、ここはぐっとこらえて言葉を飲み込む。

「この大きさだと全身麻酔をしなければいけないから、ここではできませんね。大きな病院を紹介しますから、後日また来てください。」
「今日は紹介状を書いていただけないのでしょうか。」僕は食い下がった。
「今は書けません。私も人間ですから、限界があるんです。」
「では、午後の時間にまた来ましょうか。」もう一丁食い下がってみた。
「いえ、私もどうすべきか考えているので、日を改めてください。」

休憩時間に無理やり診察をお願いしたわけじゃない。こちらはちゃんと診療時間中に来たし、受付で確認もした。
限界があるといっても、僕が診察室に入ってからまだ5分くらいしか経っていないじゃないか。
この時間の診察がきついなら、午前中の診察切り上げをもっと早めに設定すればいいじゃないか。
家の近くのクリニックにくるために今日は会社を休んでいる。サラリーマンのそんな事情を考えようともしないのか。なんか釈然としなかった。
こちらは自分の身体を切られる身だ。こんな殿様のような先生に、処理のひとつみたいに扱われたくはない。嫌な気持ちでクリニックを出た。

そのままビルも出て、外の空気を吸ったら頭の中もリフレッシュされた。なにも一度診てもらったからといって、そこに通わなければいけないという義理はない。別の病院に行こうと決めた。