技術、練習方法、教えの実践・・・ 少林寺拳法に関する研究発表の場
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■ 攻守当てさせ乱捕 (明竜)
章へジャンプ→ 偶然からできた練習方法?|「攻守当てさせ乱捕」のやり方従来の練習方法との違い一言で言うと・・・

以前デジコミに書き込んだものを纏め直しました。

■ 偶然からできた練習方法?

ちょっと変わった乱捕

私が初心者に当て身の「極め」の感覚を教えるときは、ちょっと変わった乱捕りをさせます。普通、初心者同士で乱捕りをさせると本人たちの充実感とは裏腹に腰が引けた動きの連続になりませんか。そしてこれを繰り返すと黒帯を締めてもこういう乱捕りしかできなくなるようです。

「叩かれずに叩く」という常に身を守れる心の準備が腰の引けにつながるようですが、これは当て身の五要素のうち「当て身の間合い」のみを使った対応といえるでしょう。少林寺拳法は護身の技術ですから、いつも身を守れる状況になくてはいけません。しかし必要ない時にも遠くにさがっていては、有効な反撃が返せなくなります。

かといって格闘技のように根性で恐怖心を押さえつけ、イチかバチかで懐に飛び込むのも多くの人には無理があるように思えます。

仲間にパンチング・ミットを持ってもらって任意の所に任意のタイミングでパッパッパッと連続して出してもらえば、叩きづらい場所が数多く存在していることが分かると思います。このように、実は乱捕りをしている両者の間には安全な空間が存在します。そして受けや崩しを使えば、その安全空間はもっと大きくなるでしょう。話は逸れますが、この安全空間を広げるコツこそが技と呼ばれるものだと思います。

そんな当身じゃ効かないよ

さて、相手の安全空間を知り、自分の危険空間に相手を位置させるために、私の所属する支部では「攻守当てさせ乱捕」という乱捕りを行っております。

これはそもそも妻のために行っていた練習方法でした。
「そんな当て身じゃ、効かないよ。」と思い切り叩かせ体で受け止めたのがきっかけで、コンチクショウと思ったのか、練習のたび妻は10分近く生身の私をド突くようになりました。妻の出す当て身は日毎に強烈になり(とくに夫婦喧嘩をした日の練習では著しい進歩が見られました)、支部の仲間も端で見ていて明らかに妻のフォームは変わってきていると言います。

また、なんとか効かせようと思うのか、いつのまにか虚実を使ったコンビネーションまで上達してしまいました。今の私はすっかり妻のサンドバックと化してます…。もう、防具なしでは耐えられません。そして私のおなかも引っ込み、体重も5kgぐらい落ちました。私の家事の役目も増えました。

目の前で変わっていく妻の姿に刺激を受けたのか、支部の仲間から教えてくれと言われたので、誰でもやれる方法に変え、やり方のポイントを整理し、練習目的を明確にするために「攻守当て乱捕」と名前をつけました。

メリット分析

攻者としてこの練習方法をすることによって、余計なことに注意を割かずに、全神経を当て身に集中させ、結果として理想的な当て身を身につけることができます。これでオープニング・ブローを取る駆け引きを身につけば、見事な攻者の出来上がりです。

また、守者としてこの練習をやることによって、叩かれることへの過剰な恐怖心を取り除くと共に、もっとも危険なタイミングと場所を知ることができます。危険空間以外は安全ですから、危険空間を知るということは安全空間を知ることです。

こうしてどこが危険かどこが安全かが分かると、法形や演武をやっても随分楽に、しかも見た目にもリアリティを持ってできるようになります。そしてこれは戦術組成の際にも大変役立ちます。

理屈だけ考えれば、常に安全空間に位置し続ければ叩かれることはないのですから、人並みの体力があれば十分という、パワーどころかスピードにも頼らない護身の戦術が組めるはずです。

「そんなに上手くはいかないよ」と否定するのも簡単ですが、以前月刊少林寺拳法の以拳学人に出た本部御殿手の上原さんの動きや、ヒクソン・グレーシーの絶妙なタックルなどは、目に見えぬほど早いわけでもないのに、見る者に危険なイメージを与えません。そこに何か考えるべき要素があるような気がします。

少林寺でも、たしか昔はこの辺の研究がされ「攻撃線」という概念が出されました。しかし最近では攻撃線はもっぱら攻撃の軌跡と同義に使われるようになってしまいました。ちょっと残念です。

ご興味ある方がいらっしゃれば、「攻守当てさせ乱捕り」のやり方をご説明いたします。

「攻守当てさせ乱捕り」で実際に攻撃を当てる感覚を養えるのは勿論、動く標的に対する練習にもなり、また副産物として「残心」「八方目」も自然に身に付けられるようです。

■ 「攻守当てさせ乱捕」やり方

実施におかれては、各位の創意工夫でその時々の練習の目的あったやり方に調整してみてください。また、言葉のみでイメージを正しく伝わるかというと非常に難しいものがあります。ご興味がある方はe-研交流会にご参加いただければ実際に目の前で実演しながらご説明いたします。


***  やり方  ***

攻守に分かれて2、3分ずつ行います。乱捕りというよりミット蹴りに近いかもしれません。
●攻者のルール:
1. 体重の2割ぐらいを掛ける当て身で、自由に動きゆっくりめの連攻撃をする(当て止め)
2. ただし上段は寸止め
●守者のルール:
1. なるべくその場を動かないで「受け」や「捌き」を使わず相手の攻撃を体で受けとめる
2. ただし上段攻撃だけはブロックをするか、払い流す


***    以上      ***

この練習によって、攻者は「駆け引き」抜きに当て身の練習ができ、守者は体で当て身を受ける経験をして過剰な恐怖心を克服できます。

またつい、守者は手で受けようとしたりかわそうとしてしまいがちですが、それではこの練習の意味が無くなるばかりか、事故の危険も増えますのでサンドバッグなりきりましょう。反対に攻者は寸止めにならないよう気をつけてください。どうしても寸止めになる時はスローモーションでやってみてください。


=  追加の情報  =

◆この練習のメリット:
攻者のメリット
1. 当然のことながら的の動き方、当たった感触がサンドバッグよりリアル
2. 乱捕りにつき物の「駆け引き」抜きで攻撃力向上に専念できる
守者のメリット
1. 当て身を体で受けるので、意外と怖くないことが実感できる
2. 自然に八方目になっていたりする
3. 「残構え」ではなく「残心」が身につく
両者のメリット
1. 怪我したら攻者の責任ということが明白なので、かえって当て身が入る事故が少ない
2. ストレス発散にもなり、そこそこの充実感が得られる
3. 冬場などウォーミングアップにもよい
4. エアロビ効果もありシェイプアップ(?)になる
◆防具の着用:
1. 体重の2割といっても骨同士がぶつかるとかなり痛いです。相手に怪我させないために、拳サポ、スネサポぐらいは最低限のエチケットとしてつけましょう
2. 女性は胴もつけましょう。ですが胴をつけても体への衝撃は殺しきれません、女性の体は男性と違って生殖器がお腹の内部にあります。どんな影響がでるか分りませんのであまり打たれ役をやらないでください。
◆第三者の立会い:
1. このルールであまりエキサイトするところは見たことありませんが、見学も兼ねて3人一組で行うと良いでしょう。
◆その他感じたこと:
1. 少林寺をやると自然と相手を立てられるようになると言われてますが、私は言葉足らずだと思います。相手を立てられる人でないと上手くなれないのではと思っています。

因みに私は、練習の始めに全ての単演をゆっくりと左右一通り行い、「攻守当てさせ乱捕」でウォーミングアップをし、後は指導か技の研究に入っていきます


■ 従来の練習方法との違いを一言で言うと・・・

こうして改めて文書にしてみると、今まで行われてきた練習方法とあまり変わりないことに気づきます。

他の練習方法を否定するつもりは毛頭ありませんが、皆様の練習に参考になれば幸いです。一言でポイントを述べると、フルコンの練習方法と比較すると攻守に役割を分けるところが珍しく、少林寺の練習方法と比較すると相手の当て身を正面から体で受けるところが変わってます。

これにより、体の使い方を「教える」のではなく、「割り出させる」ことが可能になるようです。